活動実績

事業譲渡には落とし穴があり!?

譲渡契約

ご依頼者

B社

ご相談内容

ホテル業を営んでいたA社は、ホテル事業をB社へ売却することとし、土地と建物と屋号「アジア旅館(仮名)」など事業を譲渡(※1)しました。

※1 事業譲渡とは、個別の財産だけでなく、事業の目的のため一体として機能する資産を一括して譲り渡すことをいいます。したがって、ノウハウや屋号、取引先との関係などを不可分一体として譲渡の対象とするものです。

A社にはY銀行からの借入が5000万円ありました。

B社は事業譲渡後、新たに「アジア旅館」を新規オープンする予定でした。

しかしこの場合、連帯保証をしていないY銀行からA社の債務5,000万円を支払えと、B社に請求が来てしまう可能性がありるのです。

B社から5,000万円を支払わないといけないのか?

ご相談後

私が担当した案件では、債権者にA社の債務を引き継がないと通知を出して、事なきを得ました(以下で説明する2の方法になります)。

この事例のポイント

これは「商号続用」(会社法22条1項)という問題です。

会社法22条1項

事業を譲り受けた会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負う。

なぜこのような法律があるかというと、『「アジア旅館」というブランドは同じ会社によって運営されているだろう』という他者の外側から見える取引の信頼を保護しようとしているのです。外観法理(※2)と言います。

※2 外観法理とは、真実と異なる外観が存在し、真の権利者にその外観作出についての帰責性がある場合、その外観を信頼した第三者を保護するために外観どおりの法律上の効果を認める法理論のことをいいます。この例では、A社からB社に事業譲渡されたことを知らない取引相手が保護されることになります。

ホテルの屋号は、長い歴史とともにお客様から受けた信頼として財産価値がありますので、事業譲渡後もこの屋号を引き継ぐことはとても多いです。たとえば、「帝国ホテル」など、長年優良なホテルであった屋号はそれだけで大変な価値があります。

では、こうした「商号続用」によって借金を引き継ぎたくないB社はどうしたらよいか。その答えは会社法22条2項以降に書いてあります。

方法は次の二つ。

1 「B社はA社の負債を承継しません」とB社の会社情報に登記する。公に示すことで借金を引き継がないことを公表して、債権者に知らしめる方法です。

2 A社の債権者に事業譲渡後遅滞なく、B社はA社の負債を負いませんと通知する。

債権者に借金は引き継ぎませんと直接に伝える方法です。

こういう対応をすることによって、B社に事業が譲渡されたことをA社の債権者に知らして、取引の信頼を保護するのです。

事業譲渡は非常に有効な再建手法でもありますが、法的に難しい問題が多くありますので、是非専門家である弁護士へのご相談をお勧めいたします。

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アジア国際総合法律事務所 代表弁護士 村岡徹也

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